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    「何んの。面倒だからこのまゝ行かう」

    「はゝ、知つているな。よし、よし何もいやしない」

    練吉は盃を口にふくみながら答へた。

    「随分早いのね」

    「あれは何でせう、知吉さんといふ人は悪く云ふと娘をひつかけて相沢の家に入りこんだやうなもんでせう」

    今泉は一寸いやな顔になりかけたが、

    「あゝ、さうだつた。なあんだ!」

    房一は満足げに、かへつて来た犬の頭をかるくたゝいた。

    「なに、切れてるつて?」

    口ごもつて、

    ――もともと、練吉は房一から対診を頼まれたことさへ少からず意外だつた。これが若し、自分の場合だつたら、それは弱味を見せるといふことだつた。彼はまだ、房一に対診を頼むやうなことはつひぞ考へたことはなかつたし、これから先だつてそんなことを考へつきはしないだらうと云ふより、練吉には漠然と、房一を自分と同じ医者だと見る気にはいまだになれなかつたのである。

    そして、食卓に突き立てたまゝになつている短刀を、火箸か何かつかむやうな、無造作な素速い手つきで抜きとると、鞘におさめて腹帯の内側へ入れながら、

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